イベントレポート

関西若手起業家ピッチコンテスト vol.1 (3/3)

2018/2/13 billage OSAKAにて「U-25 kansai pitch contest vol.1(関西若手起業家ピッチコンテスト)」が開催されました。イベント後半は「若手起業家×資金調達」をテーマに審査員4名がトークセッションを行いました。

登壇者

テーマは「若手起業家×資金調達」

財前英司氏(以下、モデレーター):皆さん、こんにちは。
ピッチの後で、登壇者もご来場の皆さんもちょっとお疲れだとは思いますが、普段ならなかなかお話し聞けない方々にお越しいただいてるので、トークセッションを始めたいと思います。

まず、永谷さんから順番に、簡単な自己紹介と普段どういうことをされているのかのご説明をお願いできますか。

永谷亜矢子氏(以下、永谷):今日は吉本興業のプロデューサーという立場で来ております、永谷です。
今は既に独立しているんですが、マーケティングやPR、事業、イベント、メディアのプロデュースなど吉本の仕事も引き続き行っています。

さらに、大阪府さんの仕事も行っています。御堂筋ランウェイのプロデュースとか。
大阪は、エルマガジン社さん以外、紙もウェブもメディアがほぼほぼ見当たらない状況で……インバウンドでは関東2000万人、関西も2000万人。もうリピーターの数でいうと関西圏のほうが多いんですけど、海外のどこにも関西のニュースが伝わっていないんです。ということで、そのためのメディアをつくったりもしています。ちなみに来月リリースします。
なので、東京に住んではいるんですけど、週一では大阪におりますのでよろしくお願いします。

財前:ありがとうございます。続いて、光信さん、お願いします。

光信博雄氏(以下、光信):伊藤忠商事の光信と申します。3年前から大阪に来て、今は関西開発調査室という部署におります。 仕事は主に2つあります。
弊社の事業会社は3000社を越える事業会社がございまして、皆さんが御存じの会社ですと、「ファミリーマート」や「SKY PerfecTV!」とか。
いろんな事業会社があるのですが、事業会社同士の横連携って意外にできてなくて……その仲人的な役割として、例えばどこかうちのグループを別の会社に紹介したりとか、そういった横連携を推進するような仕事が1つ。

あともう1つが、新規ビジネス開拓です。弊社の仕事もほんとにアパレルから化学品からエネルギーから食品からと、いろいろありますが、それらの仕事も10年後にはどうなってるかわからない。だから、「新しいビジネスを作り出そう」というのが弊社の命題でございまして、新しい商売をつくるべくほかの企業の方やスタートアップも含めて、グループ外企業との連携を模索する仕事をしています。
主にこの2つをやっております。本日はよろしくお願いいたします。

財前:次に、一番ただものじゃない感が漂っている……(笑)市村さん、お願いします。

市村昭宏氏(以下、市村):DMMの市村でございます。よろしくお願いします。
私、もともとはスタートアップをやっていまして、どちらかというと登壇者側にいて、「審査員が何かいろいろ言ってるなー」とか思いながらプレゼンする側でございました(笑)。

3年半前にDMMに会社を売却して、今はDMMで新規事業やM&Aに携わったりしています。うちの場合はマイノリティー出資だけじゃなくて、まるごと買うということもやります。

それと最近、DMMベンチャーズという、ほんとに1~5%のマイノリティー出資するファンドをつくったので、そちらをハンドルしてます。あとは実際、投資した会社、それをどうやって育てていくのかというのを、一緒になって考えるということをやってます。

うちの場合、事業数でいうと40ぐらいサービスや事業があるんです。いろんな毛色のものがあるので、「この会社だったら、うちでいうこの事業部と話をしましょう」とか、「マーケティングが足りないんだったら、うちのマーケティング部くっつけよう」とか、投資だけじゃなくて社内リソースの提供もやっています。以上です。

財前:ありがとうございます。最後に、松山さん。

松山馨太氏(以下、松山):YJキャピタルの松山と申します。よろしくお願いします。
僕はYJキャピタルではシード領域を担当しており、VCとしては昨年の10月からと歴が浅いのですが……以前は企業で勤めて事業開発をしたり、そのあと自分で起業したりもしていました。

YJキャピタルでは、East Venturesと共同で「Code Republic(コードパブリック)」というアクセラレータープログラムの運営をしております。
内容としては、シード期のスタートアップの方に少額投資をしてメンタリングを行ってます。あとは、スタートアップとシナジーが生まれそうなヤフーグループの部署を紹介したり、3カ月間、シードの皆様を支援していくプログラムを運営させて頂いています。

財前:ありがとうございます。
松山さんは、本日パネリストの中で唯一のCVC、ベンチャーキャピタルということでいらっしゃいますけれども、具体的に取り組まれてる支援は何かありますか?

松山:ヤフーのCVCであるため、ヤフーの資産をフル活用してます。
たとえば、ヤフーの中に「LODGE(ロッジ)」と呼ばれるコワーキングスペースがあるのでそこをスタートアップに利用して頂いたり、営業部隊と連携して、一緒にクライアントへ営業に行ったりというのはありますね。
マーケティング関連では、ヤフーが広告主=顧客となることもありますね。最初の顧客を見つるところのお手伝いをしています。

財前:ありがとうございます。

#新規事業を立ち上げる難しさ

財前:そしたら、今度は新規事業という観点からお話をお伺いしたいんですけども……永谷さんは、大阪でいろんな新規事業を立ち上げられていらっしゃいますよね!
トークセッション前にお話をお伺いしてたら、吉本って慣例や色々な決まりがある組織で事業を立ち上げるのは難しかったこともあったと思うのですが、吉本興業での新規事業の取り組みについてお話をお伺いできますか?

永谷:私自身が元々なぜか新規事業ばかりに携わっていて……元々リクルートという会社に8年いたんです。そこでは、新しい媒体を出すとか、なぜか新規事業を任されることが多くて、東京ガールズコレクション(以下、TGC)というイベントを立ち上げたりしました。実は、そのときにTGCのオーナーが持っていた株を売りに行った先が吉本興業で、そのまま入ってしまったという感じなんです。

今はコンテンツに需要がある時代

永谷:でも、そもそもTGCの株の譲り先としていろんな会社があったんですよ。その中で、私は吉本興業のPR力にすごく注目していまして、やっぱり芸人さんが3000人いると、何でもおもしろく伝えられる。
要は「お笑い」というのは、ネタだけじゃなくて、訴求力というところでも非常にインパクトがあるなと思っているんです。

在阪局のいまだに7割が、実は吉本の芸人さんがMCをやっていて、メディアパブリシティーがとり放題なんですね。これって実はもっと活かしようがあるんじゃないかなと思うんですよ。

吉本興業は結局エージェンシーなので、キャスティング業務で終わってしまってるんですけど……。今、非常にコンテンツに需要があって、というのもAmazonプライムからNetflixからTikTokにと、新たなプラットフォームとしていろんなものが出てきてると思います。そうすると、基本的に一番最初にお声がかかるのが吉本興業なんですよ。
皆さん、とにかくお笑いが大好きなので、多くの芸人さんがいるということは、非常に可能性があるということなんです。

元々持っているPRプラットフォームを活用

永谷:大阪万博が決まって、海外に向けてPRがさらに必要になってきてるんです。大阪マラソンとか、大阪文化芸術フェスとか、現在もいろいろあるんですけど、やはり海外にリーチしてないということで、もう少しインパクトのある事業が必要なんですよ。
ただ国内にも全国に届くような事業が大阪にはないので、まずは国内からやってみようということで、3年前から御堂筋でやってるのが「御堂筋ランウェイ」。今年はコブクロさんの20周年ライブをしてもらったり、去年は登美丘高校さんに出てもらったりとかしています。
そこを発表の場として、吉本のコンテンツである芸人をドバっと出すというよりは、吉本が元々持っているPRプラットフォームを活用してそういう事業をつくったりしてます。

そして、インバウンド向けのメディアもつくりました。これは国内も言えることなんですが、関西のニュースってほとんど伝わっていないんですよね。
なので、デジタルメディアを立ち上げて、中国だったらSNSってインスタしか見れないのでWeiboやオウンドで立ち上げたりとかして、きちんと海外に届くニュースメディアをつくろうと思っています。

コンテンツの構築

永谷:それも芸人さんというコンテンツがあるからなんですね。しかも、今は芸人もライター化をしています。今までのお笑い芸人は劇場に出て、テレビのMCになるというルートが一般的だと思うんですが、これを変えていこうという作業もいろいろしています。
なので、芸人がもう少しデジタルに強くなるような……例えば、今は自分でメディアを持ってるようなものなのでYouTuberが実は一番稼げるんですね、インフルエンサーよりも。ただ、編集スキルがなかったり、グラフィックをつくりたくてもPCを買うお金がなかったり(笑)。そういうものを今後サポートしていくみたいなことを考えています。

財前:いわゆるコンテンツを築くこと自体も行ってるんですね。コンテンツを持っていることが強みで……それじゃあ、コンテンツさえ引っさげたら、苦労はなかったですか。

どうやってコンテンツをリーチさせるのか

永谷:いや、それがコンテンツだけあっても誰も知らないと結局リーチしないんですよ。スタートアップも同じで、事業を立ち上げた後、次はどうやって人に使ってもらうか、そのサービスを知ってもらうかというのが鍵だと思います。

たまたま吉本は100年にわたって、ある程度インフラができていたので、そこそこ良質なコンテンツを投入すると、そこそこリーチするんです。
ただ、社内だとすぐ部署が変わったり兼務になったりするので、リソースが続かないというのが実は問題なんです。そこをどこか別の企業さんと組んでサステナブルに続けていくということができたら、大阪のボトムアップというか、いろんなところでお役に立てるような企業になるんじゃないかなと思いますね。

財前:ありがとうございます。

#スタートアップとの事業連携のコツ

財前:スタートアップとの事業連携と言いますと、光信さんは日常的にそういうことをなさっているかと思うんですが、自社のリソースとどんなスタートアップがマッチするのかを見極めるコツとかってあるんですか?

光信:難しい質問ですね。
私はもうこの仕事を3年やっているので、例えば自分がおもしろいなと思うあるスタートアップさんがいると、反射的にこの会社とうちの子会社のここをつなげたらおもしろいなとかってわかっちゃうんですよ(笑)。でも、やり始めた3年前ぐらいって全然わかんなかったですね。

自社サービスを一般ユーザーとしてしか知らなかった

光信:元々はエネルギー関係の営業を担当していまして、油や天然ガスを海外から調達してきたりしていて、今の仕事と全然違ったんです。そのときは自社の子会社も把握してないくらいで、例えばファミリーマートって、一般ユーザーとしては知っていても自分の会社の子会社としてあんまり意識したことがないぐらいでした。

でも、仕事としてやっていくうちにだんだんわかるようになってきました。この会社はこの事業部に紹介してあげたらどちらのためにもなるなぁ、とか。説明は難しいですけど、感覚&経験でわかるようになってきたというのが正直なところですかね。

財前:その辺は、目ききなんですね。本当にご自身が3年間で培ってきた経験でやってらっしゃる。
でも、シーズとニーズだけを考えて単純に引っ付けちゃうと、なかなかうまくいかないみたいなこともあるんじゃないですか? 人と人の相性もあると思うので……。

事業の相性とマッチするかどうかは別問題

光信:正直なところ、失敗例も結構あります(笑)。いいなと思ってお見合いしてもらったのに結局あんまりとか……。

今、デザイン思考ってよく言われますけど、どんなに事業の相性が良くても結局は人間同士なので……ご縁がなかったというか、結果的にうまくいかなかったというのは、実は結構あります。

財前:そういう人と人との部分も、やっぱり大事になってくるということですね。

#事業の評価方法

財前:市村さんは元々ご自身で事業をされてて、それを今の会社に売却されて、現在はM&Aもされてるということなんですけど……事業を買うときに事業性の評価に関して、どういうところに着目されているんですか? もちろん自社の方向性とか、自社のリソースとの親和性やシナジーとかもあると思いますが……評価基準というか、どういうところを評価されてるのかなと。

市村:評価基準はその事業や会社のフェーズによって違ってくると思いますね。一つ言えるのは、やってるモデルを見てまだまだ赤字の事業だけれども「ここはアクセルを踏めば、多分めちゃくちゃスケールするのにもったいない」と思った事業に関しては、ある程度のバリエーションはつけます。

最終的に注目しているのは"社長"

ただ結局最終的に注目しているのは、その会社の社長ですね。初期のフェーズの場合は、社長がうちに入ったときに本当にやり切るかどうかということと、うちも応援しながら一緒になってやるのでダメだったときは「お互いよく頑張った」と言えるような関係がつくれるかどうかを見ます。

中期フェーズや、もう完全に事業ができ上がっているようなところに関しては、うちの会社の中のポートフォリオを見ながら決めていきます。町の地図をつくっているイメージに近いんですけど、「この領域はうちにないから入れてみてインフラとしてワークしたら、こっちにも人が流れるよな」とか、高い目線で考えていきます。
それ以外でいうと、ユーザーを買ってくるだけみたいなM&Aもありますね。あんまりしないんですけど……。

「パッション、ロジカル、パッション」

財前:今日プレゼンしていただいた8人の起業家の方々は、どっちかというとまだシード時期でこれからサービス開始していくところが多かったと思いますが……評価されるためには、やっぱりパッションみたいなものが大事になってくるんですか?

市村:その質問、よく聞かれるんですよ(笑)。
それに対しては「パッション、ロジカル、パッション」って答えるようにしてます。要するにイントロとアウトロは想いでぶつけるんだけど、内容を聞くとしっかり考えてることがわかる、みたいなうまい組み合わせでプレゼンしてもらえると、審査員もリアクションしやすいかなと思います。

財前:ありがとうございます。YJさんもシード時期を投資対象にされているかと思いますが、まずどういう点を見られますか。

ファクトの重要性

松山:シード時期の話でいくと、市村さんの言う「パッション、ロジカル、パッション」はめちゃめちゃしっくりきました。
もちろんビジョンや意思の強さみたいなところも見ているんですけど、そのためのロジカルの部分は注目しています。ターゲットを定めるにしろ、本当にちゃんとインタビューして調査しているのか、その検証のファクトを非常に重要視していますね。意思とビジョンの部分と、検証してきちんとしたロジックが組まれているのかという2点を一番見ているかなと思います。

その他には、市場の大きさも見ています。「IPO及びIPO後も長期的に成長していく企業へ投資したい」という想いがあり、市場規模は大きな評価基準となっています。

意思やビジョンをどう評価するのか

財前:そうなんですね。パッションとかって定性的で……どうやって言語化するかというのも難しい部分だと思うんですけど、どう判断されているんですか?
先ほど光信さんのお話にもありましたが、やっぱり直接会って、自分の目で見て判断するみたいな感じなんですか?

松山:僕は、その起業家がそのビジョンを持つに至った原体験みたいなところに注目しています。今回のプレゼンでもあったと思いますけども、自分の中で危機意識や問題意識を持って語ってる人に対しては共感もしやすいし、意思が伝わってくるように感じますね。

財前:想いを伝えるのは、そういう苦悩とか怒りみたいな原体験を基にした課題意識が大切なんですね。
といったところで、そろそろお時間が来てしまいました。本当に短い時間ではありましたけれども、これでトークセッションを終わりたいと思います。皆さん、ありがとうございました。

(会場拍手)

s